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「通算2,000本安打を目指す福浦選手、キャンプイン直前の想い」

打席に入る福浦選手

「一年は早いね」。キャンプ出発前日。福浦和也内野手はいつものように本拠地QVCマリンフィールドに訪れ、体を動かしていた。
練習を終え、誰もいないロッカーで椅子に腰を下ろすと、スッと息を吐いた。時計の針は夕方の6時を示していた。
プロ23年目、通算2,000本安打まであと88本。偉業達成の注目を集めるマリーンズの大ベテランはオフが終わりを迎え、一人の時間に浸っているようだった。

「歳をとるほど、一年が早く感じるというけど、本当にそうだね。ついこの間、シーズンが終わったと思ったら、もうキャンプ。何年やっても、キャンプ前は落ち着かないなあ」

野球人にとってキャンプインは「お正月」と言う人がいる。キャンプ出発前日。自宅を一ヶ月以上空ける事になる最後の夜は、誰もが感傷的になる。
それは23回目のキャンプを迎える福浦も一緒だった。練習を終え、一息つくと、急いで帰路についた。

「子供たちと遊んであげないとね。これから長い事、寂しい思いをさせてしまうから。今日は一緒に食事をして、いろいろと子供と話をするよ」

勝負師のその顔が一瞬、2人の息子を持つ父の顔に戻った。ファンはそんな男の2,000本安打達成を待ち望んでいる。
千葉県習志野市出身。93年ドラフトの最後の指名となる7位でマリーンズに投手として入団した。
しかし、プロ1年目のシーズン半ばに投手として見切りをつけられ、オールスター明けから野手転向。
そこから、ここまでキャリア積み重ねてきた。ファンは地元出身の生え抜き選手である事と、これまで上り詰めるまでの苦労を知るからこそ、背番号「9」を熱狂的に応援する。
「俺たちの福浦」と敬愛する。一日も早く偉業達成をその目で見たいと望む。

「記録は恩返しだよね。応援してくれるファンの方、ここまで育ててくれたマリーンズへの。
ただ、記録を狙いにはいかない。あくまでチームの勝利優先。その軸はプロで野球をやっている以上は、絶対に変えない」

福浦は記録達成をメデイアなどに聞かれると必ず、そう答える。
FOR THE TEAM。野球を始めた時から、ここまでチームの勝利のためにやってきた。それが自身の哲学。
だから、個人の記録を追い求める事は絶対にしないと心に決めている。

「(ヒットを)狙いに行ったら、無理やりに打ってしまうことになりかねない。四球を取れる場面で打ってしまう事だってある。それはダメ。オレは勝利のためには四球とヒットの価値は一緒だと思っている。四球を求めずにヒットを狙いに行ったらチームにとってはマイナスだし、オレも終わりだよ」

冷静沈着でマリーンズのためだけに戦う男。その背中もまたファンを魅了する所以だろう。
そんな周囲が熱を帯びる中、2015年シーズン中の7月よりQVCマリンフィールド内外のオフィシャルグッズショップ2店舗(プラザ店、ホームプレート店)に「FUKU-METER」が設置された。
メーターには「ROAD TO 2000 現在1912本」と明記され、ヒットを打つたびに更新され、今シーズンも両店で常設される。
この件が1月29日に発表をされると、本人もコメントを寄せ、ボードにサインを添えた。

「ファンの皆様に応援して頂き、本当にありがたいです。グッズショップに置かれているこのボードの事も知っていました。ただ、ヒットに関しては1本1本の積み重ねで、チームの勝利、優勝に貢献する事だけに集中をして、石垣島キャンプでは練習に励みたいと思います。チームの勝利に貢献した結果として記録を達成することが出来れば嬉しいです」

どこまでも背番号「9」らしいメッセージだった。
翌30日、キャンプ地、石垣島に福浦は入った。23年目のキャンプが始まった。
1月、沖縄本島での自主トレの成果もあり、体調は例年になく万全。キャンプではバットに魂を込める作業が行われる。

「パ・リーグ インサイト」 マリーンズ球団広報 梶原紀章

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